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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13「いや……」彼はそう言いかけ、一瞬だけ口をつぐんでから、前に比べれば、ずっと柔らかい口調で答えた。「実は……この子、夜になったら大泣きする時があるんスよ。昨夜もそうだったもんスから、ちょっと睡眠不足になってて」「あぁ、それは大変ですねぇ」そういう子供は特に珍しくないが、稀まれに何かの病理的な原因がある場合があるので、一概に片付けてしまうわけにはいかない。「そういえば、斉藤さんは今日は一人なんスか? 智里ちゃんは……」しっかり名字もチーコの名前も憶えられている。「家に嫁さんのお母さんが来てくれたから、見ててもらってるんですよ」「奥さんの実家、近いんスか? いいっスね」「まぁ、いいなと思う時もあれば、面倒くさいって思う時もあるし」トモローが言うと、彼は初めて白い歯を見せた。(おっ、笑ったぞ)やっぱりエーちゃんによく似た、かわいらしい笑顔だったが──それ以前に、この間とはかなり雰囲気が違う気がした。(何だか今日は、話しやすい気がするなぁ)