tomorou015

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 14/16

電子ブックを開く

このページは tomorou015 の電子ブックに掲載されている14ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

14そう思いながらトモローは、砂場の縁に腰を下ろした。「まぁ、どっちかって言うと、助かってることの方が多いかな」「うちは親には頼れない状況なんで、実家が近いのはうらやましいっスよ」そう語りながらも砂プリンを作る手は止めず、まるで機械のように量産しているのは驚くべきことた。しかも、てっぺんに白い砂をまぶして仕上げているのは、トモローの流儀をまねしたかのようだ。もちろんまねされたからといって、怒る筋合いのことではないが。「親に頼れないっていうのは……もしかして、駆け落ちでもしたんですか」あくまでも冗談のつもりでトモローは言ったが、その言葉に武井はアッサリと頷いた。「まぁ、そんなようなもんです。何せ、この子を妊娠した時、女房はまだ高校生だったっスから」「えっ、そうなの?」思わず言葉遣いが素に戻ってしまう。「そうなんスよ。いやぁ、向こうの親はカンカンでしたね」「ちょ、ちょって待って。じゃあ、エーちゃんのお父さん、今、何歳なんですか」「俺は二十一歳で、女房は……あいつ、ノリコっていうんスけど、まだ十九ですよ」「若いなぁ」歳の差に安心したわけではないが、言葉遣いが戻らなかった──自分より年下に違いないと思っていたが、そこまで年齢差があったとは。