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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 3/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

ケンカどころか、気まずいムードになることさえ苦手で、苛立ったオーラを放っている人には、初めから近づかないようにしている。それを弱気と笑う人もいるかもしれないが、そんなところで無駄に〝男〟を見せる必要はないだろう。(ここも、引き上げた方がいいかな)トモローがチラリと思った時、立っていた金髪の女性が話しかけてきた。「お名前、何て言うんですか」「智里っていうんですけど、ふだんはチーコって呼んでます」トモローは当然のように答えた。こういう場合、たいてい聞かれているのは子供の名前である。「いえ、お父さんのお名前」「あっ、僕のですか? 僕は斉藤と言います」うるさいことを言えば、答えたのは名字だが、何も下の名前まで教える必要はなかろう。「うちは武井って言いまして、そこのアパートに住んでるんですよ」そう言いながら金髪の女性は、すぐ近くの小さなアパートを指さした。二階建ての、いかにも若い夫婦向きの建物で、きっとコーポ○○とか、ヴィラ××なんて名前が付けられているに違いない。「越してきたばっかりで、あまり近所に知り合いがいなくて……すみませんけど、いろいろ、よろしくお願いします」