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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「こちらこそ、よろしく」トモローは立ち上がって会釈をしたものの、どうして自分が、このヤンキー若夫婦とよろしくやらなければならないのか、そもそも何をいろいろよろしくなのかよくわからなかった。こちらにだって、選ぶ権利はあるはずだ。けれど──連れてこられている男の子は、なかなかの愛あい嬌きょう者ものだった。じっとトモローの顔を見つめていて、目が合うとキュッと笑う。どちらかと言えば父親似のようだが、この赤い髪の青年も、笑うとこんなにかわいいのだろうか。(まぁ、今日ぐらい、いいか)そう思ったトモローは、もう少しだけ公園にいることにした。何より、ここでさっさと帰ってしまうのは、ものすごく感じが悪いだろう。気を取り直したトモローは、持ってきていたプリンの空容器に砂を詰め、それを砂場の縁の平たいところで引っくり返した。その後、ゆっくり容器を持ち上げると、形のいい砂のプリンができている。てっぺんの平たい部分に白い砂をまぶし、より本物っぽくする(本物とは白黒が反転しているが)のが、トモローの流儀だ。「はい、プリンだよ」それを見せると、チーコは声を出して笑った。何がそんなに面白いのかとも思うが、チーコはこの遊びが好きである。「いっぱい、いっぱい」