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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

そう言うと金髪の女性は、どこか寂しそうに頷いた。つれなくしたことに若干の後ろめたさを覚えながら青年の方を見ると、彼は会話には何の興味もないように、息子のために黙々と砂のプリンを作っていた。もしかすると、機嫌を損ねたのかもしれない。(何にしても、ああいう面倒なタイプは、避けておくのが吉だよ)自分のためにもチーコのためにも、そう考えるのは悪いことではないとトモローは思った。むろん自分も周囲のママたちから、そんなふうに思われているのかもしれない……というところにまで考えは及んだが、だからと言って、無理に武井夫妻と付き合わなくてはならない理由にはならないだろう。(明日は、別の公園に行こう)トモローは赤い髪の青年の三白眼を思い出しながら、そういう判断を下したのだった。ところが次の日は朝から雲行きが怪しく、昼過ぎから雨になった。当然のようにチーコの外遊びは中止になり、少なくとも例の公園に行かなかったことに対して、大きな罪悪感を抱えずに済んだ。雨が降っているのだから、向こうも公園には行っていないはずだ。その翌日、トモローはチーコを別の公園に連れていった。例の公園に行くことも少しだけ考えたが、やはり武井夫妻に会うのは気が進まなかった。人には相性というものがあるし──あの三白眼を向けられただけで、正直、不愉快だ。