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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 9/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

もともと公園で一度だけ行き会って親しく言葉を交わしても、それきりになってしまうことは多い。人間関係というものは、出会いこそ偶然が作ってくれるかもしれないが、その先に進むためには意志の力が必要だ。思えば武井夫妻の奥さんは積極的な方だと思えるが、それが必ずしもいい方に転がるとも限らない。(そのうち、どこかで会うこともあるかもしれないけど……まぁ、向こうもすぐに忘れちゃうだろうな)そう思うことで、トモローは武井夫妻のことを忘れることにしたのだが──数日後に三白眼の父親と再会し、こちらから声をかけてしまったのは、やはり何らかの縁があったのかもしれない。公園で夫妻に会ってから十日ほどが過ぎた頃、お義母さんが自慢の孫を見せるために、友だちを連れてトモローの家にやってきた。実際、そういうことは珍しくもない。「チーコちゃんは私たちが見ているから、トモロー君は買い物とか、自分の用事をしてきていいわよ」そう言ってもらえたので、トモローは久しぶりに一人で出かけることにした。もしかすると孫とベタベタするには婿の存在が邪魔だったのかもしれないが、育児経験のある女性が二人揃っていれば、何の心配もない。実際、トモローが大きなストレスを抱え込むこともなく主夫生活ができるのは、こういう形でのサポートがあるからだった。「じゃあ、お言葉に甘えて、ちょっと出かけてきます」