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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

深く考えないようにした。結局、自分はそういうキャラクター、そういう役回りなのだろう。もっとも、それは〝いい人〟と思われているということなのだから、美智子の言うとおり、悪いことではない。こんな強こわ面もての若者さえ、自分には警戒心を持たないのだと思うと、うれしくもある。「でも武井さん……母子家庭で育ったことと、人に舐められないようにしちゃうっていうのは、あんまり関係ないんじゃないですかね? そんなふうに言ったら、一生懸命に武井さんを育てたお母さんが気の毒ですよ」トモローが感じたままに言うと、エーちゃんの父親は少しだけ口を尖らせた。「それは斉藤さんが普通の家の人だから、そう思うんスよ。わかんないかもしれませんけど、片親の家っていうのは、何かと大変で……」「それを言ったら、僕だって父子家庭でしたけど、別にケンカもしませんでしたよ」話が変な方向に広がりそうだったので、トモローは半ば無理やりに言葉を挟んだ。「えっ、斉藤さんは、お母さんがいなかったんですか」「えぇ、まぁ……僕が子供の頃に、どっか行っちゃいました」さらりと言うと、なぜかエーちゃんの父親はうれしそうな顔になって、トモローの肩を親しげに叩いた。そういうことで意気投合するのって、何だかな。「斉藤さんは、タフなんですね……それでグレたりしなかったんですか」「いえ、別に」