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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

何せ兄貴がグレていたので、それ以上、父親の手を煩わせたくない……という気持ちの方が強かったのもあるが──そういうのは何より、性格による部分が大きいのではないかと思う。どんな幸せな家に生まれても世を恨む人はいるし、何があろうと他人を攻撃しない人もいる。「まぁ、いろいろあっても、今は僕も武井さんも結婚して親になってるんだから、めでたしめでたし……じゃないですか」あまり好きな話題ではなかったので、話を終わらせるつもりでトモローはまとめたが──エーちゃんの父親としては、トモローが自分と似たような境遇の人間だということがわかってうれしかったらしい。さっきまでの肩肘張った態度がウソのように、急に親しげな態度に変わった。思えば、これがトモローの〝法則〟の秘密なのかもしれない。それからトモローとエーちゃんの父親は、育児についての話題で盛り上がった。武井家では、やはり奥さんの方が育児の主力のようだが、父親である彼にも、必要十分なアシストが義務付けられているらしい。当然と言えば当然だが、道路工事の仕事で家計を支える役目も背負っているので、少し負担になっているところがあるようだ。「何せ、うちは……言ってみれば、夫婦揃ってガキみたいなもんじゃないっスか。女房なんて、成人式もまだだし」砂場でエーちゃんと一緒に砂の山を作りながら、若い父親はボヤくように言った。夫婦揃ってガキみたいかどうかはわからないが、自分が彼の歳の頃は大学生だったことを