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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「もちろん部屋を暗くして、テレビも消しておくんだけど……早ければ、五分もかからずに寝ちゃうよ」実は斉藤家でも、同じような問題に悩んだ時期があった。チーコが大きくなって体力がつくと、それまでのように簡単に寝てくれなくなったのだ。赤ちゃんの時なら、寝かしつけに一番効果があるのは美智子のおっぱいで、その次はトモローの『森の木陰でドンジャラホイ攻撃』であったが、幼児になった今では、そのどちらもが使えなかった。すでに断乳して久しいし、横抱きにして揺すったりした日には逆に喜んでしまって、寝かしつけどころではなくなってしまうのだ。いっぱい遊んで体力を使わせておけば、そう苦労せずに済むのだが、外に出られない雨の日などはチーコも力が余ってしまうのか、寝る時間になっても布団の中でゴロゴロ転がったりして、なかなか寝つかなかった。それに困っていたところ、この秘技を、お義母さんに教えてもらったのである。初めに聞いた時は、トモローも「そんなので寝てくれたら、何の苦労もいらないよなぁ」と懐疑的だったのだが、やってみたら効果テキメンだった。隣に寝て、同じタイミングで息を吸ったり吐いたりしているだけで、チーコは簡単に眠りに落ちてくれるのだ。「やっぱり子供は体が小さい分、一回の呼吸のスピードが速いだろ? で、隣で一緒に呼吸してやると、子供はつられて、大人と同じスピードで呼吸しようとするんだね。そうするとゆっくり吸って、ゆっくり吐くようになって……いつのまにか寝ちゃうってわけ」