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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/20

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12(あ、いた)目を細めてよく見ると、向かって右側のグループに武井の姿を認めた。見覚えのある作業着のような服を着て、ズボンのポケットに両手を突っ込んでいる。しきりに体を左右に動かしているのは、何らかの威嚇の意味があるのだろうか。(状況的には、最悪だな)この場合の状況とは、あくまでもトモローにとっては、である。こうして見つけてしまった以上、まったく無視というわけにもいかない。奥さんに言われたとおり、バカなことはしないように……と、武井に声をかけないわけにはいかないだろう。しかし、両軍は睨み合いの真っ最中──無関係の自分が入っていくのは、かなり厳しい雰囲気だ。けれどウカウカしていると、本格的な衝突が始まってしまう。(ホントに、どうして俺が、こんなことをしなくっちゃいけないんだよ……。こんなの、おかしいだろ)そう思いながらトモローは、公園の入り口から中に入り、ゆっくりと男たちに近づいていく。一歩足を進めるたびに、握った掌の中に汗が溜まっていくような気がする。「あん? 何だよ、あのトッポイ兄ちゃんは」連中まであと五メートルほどの距離に近づいた時、武井の属するグループから、鋭い声が上がった。敵の援軍とでも思われたのだろうか。「あー、ちょっと、いいですか」