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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/20

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13我ながら何とも間の抜けた声のかけ方だと思う。路上でアンケートを取ろうって言うんじゃないのに。「あれ、斉藤さんじゃないッスか!?」声を出して、ようやく武井に気付いてもらえた。トモローは強張った笑いを浮かべて親しげに手をあげる。「何だ、タケの知り合いかよ」そんな気の抜けた声と一緒に、「ジャマすんじゃねぇよ、クソメガネ野郎」というありがたくもない言葉も飛んでくる。どうして自分がこんな危険を冒しているのか、本当にわからない。「武井さん、ちょっと」「何スか、斉藤さん、今、ちょっとまずいんッスけど」自分の肩を叩いて、少し離れたところに行こうとするトモローに、武井は眉を顰めて言った。「時間はかからないから……ちょっとだけ」「ジャマですって、斉藤さん。空気読んでくださいよ」「いいから」睨み合っているグループから十メートルほど距離を置き、背中をむけてトモローは言った。「武井さんこそ、何やってるんですか……奥さんが心配して、僕のところに電話をかけてき