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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 11/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

11な子供に気を遣ってくれる子もいるが、あの夢中な様子を見る限り、あの子たちには、それがあまり期待できそうになかった。実は、以前に別の公園の砂場で、やはり遊びに夢中になっている子が、チーコを弾き飛ばしてしまったことがあった。チーコがそこに立っているのが目に入らず、友だちとのヒーローごっこに熱中して、けっこうな勢いでぶつかってきたのだ。とりあえず砂場だったので、チーコは特にケガをしなかったものの──もう一歩先で倒れていたら、砂場の縁のコンクリートに頭をぶつけてしまうところだった。その時のことを思い出すと今でもゾッとするが、それ以来、元気に遊んでいる子供が近くに来た時は、自然と用心するようになった。公共心の薄い子供が悪いのだ……と文句を言っても、この場合、何も始まらない。とりあえず危険な事態が起こらないように、まわりの大人が二手先三手先を考えてやる必要がある。けれど二人の男の子は、それなりに注意ができる子たちだったらしい。エミコちゃんが階段を上っているのを見て、ちゃんと足を止めて順番を待った。(ちゃんと気をつけられる子たちだったか……疑ってスマン)滑ってくるチーコを下で受け止めながら、トモローは思ったが、謝るのは少し早かったようだ。男の子たちは、滑ろうと身を屈めたエミコちゃんの後ろで、吐き捨てるように言ったのだ。「速くしろよ」