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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13り出した。「ちょっと、小暮さん!」ノリコちゃんは追いかけようとしたが、その背中の必死さを悟ったのか、二、三歩進んだだけで足を止めた。「ノリコちゃん……あの人、ちょっとまずいんじゃないの?」二人の男の子たちの機嫌を取り、再びどこかに走って行くのを見ながら、トモローは言った。「たいして強くなかったにしても、いきなり子供に手を挙げようとするなんて……感心しないよ」子供を殴ることについては、トモローは問答無用に大反対である。きっと話せばわかるし、仮にわからなかったとしても、肉体の痛みで何かを教え込んではいけないと思っている。「実はトモローさん……小暮さん、初めて会った時、スーパーのトイレの入り口近くで泣いていたんです」「泣いていた?」「そうなんです。エミコちゃんを抱きしめて、人目を避けるようにして、ポロポロ涙を流していたんですよ。それで私、放っておけなくて声をかけたんです」なるほど、実は最初から、情緒不安定の気け があったのか──トモローは思ったが、それと小さい子に手を挙げることとは話が違う。