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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 6/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

物に付き合わされている父親が、そのクッションにずらりと並んで腰を下ろし、自分の子供が遊んでいるのをぼんやりと眺めている……という光景をよく目にするが、何となく釣り堀に集まっている人たちのようにも見える。「あの子供コーナーは、うちの子も好きですよ。だから夏の暑い時なんか、よく連れて行きました。まぁ、タダで使わせてもらうのも悪いから、帰りに少しだけ買い物して……でも、値段は別のスーパーの方が安いから、ホントにちょっとだけだったりして」何年か主夫をやっていれば、そういう知恵も自然と身につくものだ。「斉藤さんは、本当に主夫をしていらっしゃるんですね」トモローの言葉に小暮さんは応えたが、さっき以上に顔が赤くなっていた。もともと色白だからか、余計に目立つ気がする。(それにしても、ノンちゃんも、すごいよなぁ)若いノリコは、育児中には絶対にママ友がいなければならない……と信じている節があって、それが高じて、見知らぬ奥さんに声をかけることにたいして抵抗を感じていない。けれど、母親にしては若いうえに金髪というところで引かれてしまうのか、それが実を結ぶことはあまりないようだ。その結果、専業主夫という珍しい立場のトモローにまで声をかけてしまったのだが、その傾向は今も変わっていないのだろう。この小暮さんも、そんなふうに声をかけられたに違いないが──一見すれば少し怖くもあるノリコの誘いに応じるというのは、少し物好きな部分があるのかもしれない。