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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 9/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「そういうのは、ちゃんと正面から言った方がいいですよ。男なんて、口で言わないとわかりませんから……ねぇ、トモローさん」「いやいや、僕に聞かないでよ」ノリコに話を振られてトモローは苦笑いしたが、武井の顔を思い出すと、自然に笑いが込み上げてきた。彼は若いうちに子供を作って、彼女の人生を大きく変えてしまったことに責任を感じているらしく、基本的にノリコの言うことは何でも聞く。だからこそ、〝ええ格好しい〟のくせに、エーちゃんと二人で公園の砂場で遊ぶことも辞さないのだが、このままいくと、完全に尻に敷かれる日も、そう遠くないだろうと思える。「トモローさんは、会社にも勤めてたんですよね? だからわかると思うですけど、主夫とサラリーマン、どっちが大変ですか?」さらにノリコに聞かれて、トモローは思わず答えに詰まってしまった。正直なところを言ってしまえば、自分の経験に照らす限り、サラリーマンの方が楽な気がする。もちろん勤めていたのが弱小出版社だったから……という但し書きをつけての話だが、会社での生活には、ちゃんとオンとオフがある。どんな激務に追われていても、とりあえず一日の仕事を終えて会社を出てしまえば、残りの時間は自由に使うことができたのだ。少なくとも、再び出勤するまでは、仕事のことを頭から追い出しておくことも許された。けれど育児を伴った主夫業には、区切りというものがない。それこそ、やるべきことが山