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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 1/14

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

トモローが小暮さんと再会したのは、それから数日後のこと──駅前のスーパーの食料品売り場で、偶然に顔を会わせたのだ。トモローはカートにチーコを乗せて、安売りのキャベツを物色しているところだった。「この間は……どうも、すみませんでした」小暮さんはトモローの姿を見つけると、以前のように顔を真っ赤にしながら近づいてきて、蚊の鳴くような声で言った。むろん彼女もカートにエミコちゃんを乗せていたが、エミコちゃんはトモローとチーコのことを覚えているらしく、力いっぱいに手を振っていた。「いえいえ、こちらこそ失礼しました」頭を?きつつ答えながら、自分でもトンチンカンな受け答えをしていると思った。そんな表現を使うようなことはしていないはずだが、あえて言えば、よその奥さんの腕を乱暴に掴んだのが失礼に当たるかもしれない。けれど、そうしなければ、彼女の振り上げた手は子供の?に当たっていたはずだ。あの場合は、そうするしかなかった。(まぁ……悪い人ではないんだろうけどな)トモローが風に歌ったワケ2