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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 10/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10「あの……それって、ずっと続いたんですか?」「そうですね、中学を卒業する時まで続いたと思います。やっぱり、その頃って頭の中身とか心の深さって、まちまちですからね。中には、あまり言わなくなっていた子もいましたけど、お調子者っぽい子は、最後まで言っていましたよ。まぁ、あんまり頭のいい子たちじゃありませんでしたね」そう言いながら、小暮さんは隣に座っている娘の髪を撫でた。エミコちゃんは顔をあげてニッコリ笑うと、すぐにスケッチブックに目を戻した。「高校に入ってからは、おかしいくらいになくなりました。女子高だったせいもあるかもしれませんけど、みんな、あまり人のことに構わなくなったからでしょうね」その一言で、トモローはホッとするものを覚えた。楽しい学校生活が、彼女にはなかったというのは、さすがに辛すぎる。「相変わらず顔が赤くなるのは治らなかったんですけど、歳をとればとるほど、からかわれることは少なくなりました。就職してから、職場で話題にされることもなかったわけじゃありませんけど、長くは引っ張らないで、その場だけで終わるくらいでした……ですから、私もあまり気にしないようになったんです」「それは何よりじゃないですか」自分の罪の記憶を棚に上げて、トモローは言ったが──そう言った小暮さんの表情は、決して明るいものではなかった。