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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 11/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

11「結婚してこの子が生まれるまでは、その頃のことなんて、私も頭の隅に追いやっていたんですけど……ダメなんです。この子と一緒にいると、どういうわけか自分の子供の頃のことを、生々しく思い出しちゃうんですよ」それは、よくわかる話だった。子供を育てていると、どうしても自分が同じ歳だった頃のことを、思い出してしまうものだ。「きっと、そんなことじゃダメなんでしょうね。でも、どうしても自分が辛かったことを思い出して……この子には、絶対そんな思いをさせたくないって思っちゃうんですよ」それは親なら、誰だってそう思うはずだ。自分が味わってきた理不尽な辛さを、最愛の子供に味わわせたくないと考えるのは、当たり前すぎる感情である。そう考えた時、小暮さんが言わんとしていることが、トモローにはハッキリとわかった。つまり彼女は、エミコちゃんに無思慮な言葉を浴びせかける子供に、かつて自分をいじめた連中の影を重ねてしまうのだ。そして子供の頃にできなかった抵抗を、大人になった今、やってしまいそうになるに違いない。「この間、滑り台であの男の子に手をあげようとしたのは……そういう理由なんですね」「私だって、いけないと思っているんです」強い口調で、小暮さんは言った。「相手は小さい子供です。どんな乱暴な子だって、親御さんから見ればかわいいに決まってます。その子たちをぶったりしたら、どれだけ親御さんが悲しくなったり、腹を立てたりす