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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 2/14

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

物腰も柔らかいし、何より娘のエミコちゃんの様子を見れば、ちゃんとした母親なのだろうとは思う。けれどトモローは、すぐには打ち解けられないものも感じていた。やはり、どんな理由があれ、小さな子供に──ましてや、よその家の子に手を挙げようとする人を、どうしても好きになれなかったからだ。もしかすると、チーコに手を出されてたまるか……という気持ちがあるからかもしれない。そう思うなら会釈の一つもして、さっさとその場を離れればいいだろうに、そのタイミングを捕まえることができなかった。「このスーパーには、よく買いに来るんですか」話の接ぎ穂に困って、そんなどうでもいいことを尋ねる。「えぇ、まぁ……近くに本屋さんがあるもんですから」「あ、三谷ブックスですか? 僕もよく行くんですよ。あの店は、唯一まともな本屋さんですもんね」やっぱり本屋の話を出されると、トモローは弱い。つい素に戻って答えてしまった。「あの……実は、少しご相談したいことがあるんですが」しばらく本の話をした後、小暮さんはおずおずと切り出してきた。「こんなこと、よそのご主人に話すことじゃないのかもしれませんけど……ノリコさんが、斉藤さんに相談してみたらっておっしゃったものですから」知り合って日の浅い人間に、ずけずけ相談を持ちかけるタイプでないことは、彼女が慎重