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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

実際のところはどうだったか、自分も少しばかり酒が入っていたので、よく覚えていない。ただ、今にして思えば、凶悪極まりない目つきの武井にケンカを売るようなまねが、よくできたものだと思う。『イナズマ☆ゴロー』の異名を取った兄貴と違って、自分は完全に平和主義者──軟弱者と呼ばれようが腰抜けと呼ばれようが、感情を?き出しにして人と争うのは避けたいと考えている人間である。あるいは、ただの〝ええカッコしぃ〟なのかも知れないが。そんな意味のことを言うと、彼女なりの接点を見つけたのか、小暮さんは真剣な顔で言った。「そんな斉藤さんなら、この間のこと、驚かれましたでしょう?」「この間のこと……ですか」当然、彼女がよその子供に手をあげかけたことを言っているのだろう。「実は、少し驚きました。小暮さんは、そんな短気な人には見えないですから」たとえば、世の中の人を『文化系』と『体育会系』に無理やり分ければ、彼女は絶対に自分と同じように前者のグループに入れられる人だと思う。読書が好きだと聞いて、その思いはさらに強くなっていた。「私だって、人に……ましてや子供に手をあげるなんて、とんでもないことだと思ってます。でも、この間は、手が勝手に動いてしまったんですよ。すぐ近くに斉藤さんがいてくださって、本当によかったと思っています」