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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 6/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「会ったばかりの斉藤さんに、こんな話をするのはどうかとも思うんですけど……私、子供の頃、いじめられていたんです」トモローは思わず正面から、小暮さんの顔を見た。「こんなことを自分で言ったら、何だか甘えているだけみたいに聞こえるかもしれませんね。でも、子供の頃は、すごく悩んだんですよ」思いがけず重たい話になりそうな気がして、隣に座っているチーコとエミコちゃんの方を見てしまう。子供の耳に入れてもいいような話なのだろうか。「ミエちゃん、ほら、チーコちゃんに、お花を描いてあげれば」小暮さんもそう思ったのか、バッグの中から小さなスケッチブックとクレヨンの箱を出してテーブルの上に置いた。エミコちゃんの顔がパッと輝く。「この子、本当に絵を描くのが大好きで……だから、いつも持って歩いているんです」エミコちゃんはスケッチブックを開くと、前に描いたネズミの親子らしい絵をチーコに見せた。「チーちゃん、これ、ミエちゃんが描いたんだよ。ゾウさん!」ごめん、ネズミじゃなくて、ゾウさんでした。鼻を、もう少し長く描いてくれていたらなぁ。「チーちゃんも描きなよ」面倒見のいいエミコちゃんは、スケッチブックとクレヨンの箱を間に置いてくれた。たち