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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

コ〟っていうアダ名だったんです」「いかにも、子供が考えそうですねぇ」まったく子供というのは芸がない。顔が赤くなれば〝ゆでダコ〟、メガネをかけていれば〝メガネザル〟、太っていれば〝ブタ〟、すごく痩せていれば〝骨皮筋衛門〟──もう少しエスプリの利いたアダ名が思いつかないものだろうか。「それに家が経済的に苦しかったものですから、学校に納めるお金も遅れたりして……大人になった今から考えれば、大したことではないんですけど、どれも小学生くらいの頃は、そんなことでもからかいの種になるでしょう?」「確かに……そういうところはあるかもしれませんね」子供というのは、大人が期待しているほど心が広くもなければ、柔らかな感覚を持っているわけでもない。むしろ幼い時ほど、規律や場の空気を重視して、そこからはみ出している人間を、ここぞとばかりに槍玉にあげたりする。「小学校の四年生くらいの頃から、いろいろ言われるようになって……五年生の時にはクラスの男の子にバイキン扱いされていたんです。私の旧姓は小野って言うんですけど、私が触ったところは『小野菌がついた』とか言って、みんなが触らないようにしたり」その言葉を聞いて、トモローはドキリとした。実はトモローの小学校の頃にも、そんな扱いを受けている女子生徒が何人かいたのだ。今から思えば、異性に関心を持ち始めた恥じらいの裏返しだったのだろうが、かわいい女の子