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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 9/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

に殊こと更さらにひどい言葉を投げつけてみたり、勉強や運動がパッとしない子を腐して笑うような傾向が、確かにあった。何事も真ん中だったトモローも、恥ずかしながら、それに乗っかっていた記憶がある。心からそう思っているわけではないのに、「あいつ、気持ち悪いよな」とネタにしたり、それこそ〝○○菌ごっこ〟なども、友だちとやったことがあるのだ。苦しい言い訳をするなら、あの頃は、まだ人間として覚醒しない猿のようなものだった。だから人を傷つける恐ろしさよりも、その場のノリだとか、友だちとのバカ騒ぎが盛り上がることばかり考えていた。ある程度、分別を持った頃──トモローは、その行いのひどさに気づいて、愕然としたものだ。いくら猿同然だったとはいえ、人の容姿を笑い者にしたり、頑張ろうとする人たちの足を引っ張っていたなんて、とんでもない話だ。(あの子は、どんなに辛くて寂しかったことだろう)その対象にされた子の気持ちに思いを寄せた時、猿だった自分が犯した罪の深さを?みしめたものだ。いつかクラス会や同窓会で顔を会わせる機会があったら、必ず謝りたいと思っているけれど──そういう子ほどそんな会には顔を出さない。楽しくないとわかっていて、来るわけがない。小暮さんの話を聞きながら、トモローは自分の罪を思い出していた。正直、聞き続けるには辛い話だった。