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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 10/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10「私……いつか大変なことをしてしまいそうで、怖いんです」そう言って目に涙を溜めていた小暮さんを思い出すと、トモローは胸が痛むのを感じた。彼女だって、自分の怒りが正当なものでないことは、十分に知っているのだ。そしていつか、それに身を委ねてしまいそうで怯えている。その小暮さんになんと言ってあげればいいのだろう。仕方のないことだから我慢しろ……と言うのか。それが無理なら、誰とも関わらないように、家の中に引っ込んでいろ……とでも言えばいいのか。(何か方法はないのか)そう思った時、玄関の扉が勢いよく開いた。「ヘイ、ハピハピ・バースデー!」上機嫌に部屋に入ってきたのは兄貴の悟朗だ。部屋のあちこちから、〝お帰り〟の声が飛ぶ。「みんな、遅くなってスマン。お腹がペンペコリンで目玉グルリンコじゃないか?」「それほどのことはないよ」ヒョウキン全開の兄貴に、トモローは冷静な声で答えた。これが「イナズマ☆ゴロー」の二つ名で知られた不良少年の成れの果てかと思うと、寂しいような、ホッとするような。「ちょっと待っててくれ」