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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12今年の夏は暑かったから、それも理解できるが──確かに兄貴は、腹の部分だけポッコリと前に突き出た太り方をしていた。地獄の餓鬼に似ていないこともない。「このままじゃ、『イノブタ☆ゴロー』になっちまう」思わずトモローは爆笑した。自分のことなのに、何て的確なネーミングなんだ。「だから、わざと水を飲んで、ビールをうまく感じないようにしてるんだ。まぁ、焼酎は飲むんだけどな」なるほど、悪くない作戦だと思う。思い切りさえあれば、誰にでもできるダイエット方法だ。「でも悪いけど、俺は飲むからね」そう言ってトモローは、グラスに注がれたビールを、乾杯の音頭の後にグビグビと喉に流し込んだ。「かーっ、兄貴、やっぱりビールはうまいよ」聞こえよがしに言うと、兄貴は義姉が用意した焼酎の水割りを舐めて言った。「そうか? 全然うらやましくねぇよ」わざわざ言うくらいなのだから、本当は涙が出るほど飲みたいのではないかと思ったが──兄貴は案外に平気そうだった。「やっぱり喉の渇きが、水で解消されちゃったからだろうな……ホントに、別にいいやって気になるんだよ」