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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 14/14

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

14一緒に体を揺すり始める。「何だか恥ずかしいですね……」小暮さんは困ったような顔で笑った。「いいから騙されたと思って、歌ってみてください」渋る小暮さんを何度か促すと、小暮さんはようやく小声で歌い始めた。(すみません、小暮さん……他に方法がないんですよ)その顔を見ながら、トモローは自分の無力さを?みしめていた。正直に言って、彼女の苦しみを根本的に解決する方法が、どうしても思いつけない。それこそ、彼女が過去の辛い思い出を完全に忘れるか、あるいは世の中のすべての人間が、穏やかで平和的な性格にでもならなければ無理な話だ。あるいは彼女が精神科の医師に相談し、専門的な治療を受けるか。それができないとなれば──心をうまくすり替えていくしかない。「じゃあ次は、『ちょんまげマーチ』でいきましょう。はい、ちょんまげ、ちょんまげ、ちょんまげマーチ……」何度聞いても意味がわからない歌詞だが、強引に人を明るくする名曲中の名曲だ……と、トモローは思った。(つづく)