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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 3/14

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「ちぇっ、ドン臭いでやんの」「なんだとう」トモローが富士朗の?をつねりあげた時、義姉がキッチンから出てくる。「あとは旦那が帰ってきてから、お刺身を出せばいいわ。あの人は、お刺身さえあれば機嫌がいいから、ふだんより楽なくらいよ」テーブルの上に料理が並び、後は兄貴の帰りを待つばかりとなった。見かけに寄らず子煩悩な兄貴は、今日ばかりは仕事が終わり次第、飛んで帰ってくるはずだ。「でも……その人も苦労するわね。やっぱり子供の頃のことって、いつまでも尾を引くものなのね」甥っ子たちとゲームを始める前に、小暮さんのことを義姉に相談していた。トモローなりに考えてはみたものの、どうしても答えが見つからなかったからだ。そういう場合は、育児の先輩の意見に耳を傾けるに限る。本当なら小暮さんの許可も得ずに、みだりに相談されたことを人に漏らしてはいけないのだろうが、彼女と義姉が顔を合わせる確率はきわめて薄いので、そこは勘弁してもらおう。「そういえば、富士朗が幼稚園に行っていた時なんだけどさ」椅子に腰を下ろした義姉が言った。「汚い言葉や乱暴な言葉は使わないようにしましょう……っていう決まりがあったのね。特に、お友だちに絶対に〝バカ〟とか言わないようにって」