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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

確かに小さい子供が連呼しているのを聞くと、切なくなってくる言葉だ。「だから子供が誰かに〝バカ〟って言ったら、先生たちが飛んできて注意するの。『人のことをバカって言う人が、バカなんですよ』って……だから幼稚園の子たちは、絶対に使わないようにしてたのね。やっぱり子供たちは先生が好きだから、言うことをよく聞くのよ。うっかり家で使ったら、私たちの方が富士朗に??られるくらいでさ」「へぇ、兄貴も?」「そうよ。あの人なんか、人にバカって言うのが口癖みたいなもんだったから、苦労していたわよ……でも、自分の乱暴な言葉遣いが子供に移って、そのせいで子供が嫌われるようなことがあっちゃいけないって言って、頑張ってたのよ」そういえば兄貴自身がそう話していたのを、何かの機会で聞いたような記憶もある。自分の育ちにコンプレックスを持っている兄貴らしい話だ。「それでね……富士朗が小学校に入って二週間くらいした頃だったかなぁ。いきなり、この子が泣きながら帰ってきてさ」「ママ、その話はやめてよ」ゲームの画面から目を離さずに富士朗が言ったが、あまり真剣に嫌がっている様子もなかった。相手がトモローよりも何倍も強い美智子に変わったので、それどころではないのだろう。「富士朗が泣いて帰ってきたって、そりゃまた、どうして?」