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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「友だちとケンカして、『バカ、バカ、バカ、バカ!』って連発されたの。で、この子が『バカって言うヤツの方がバカなんだぞ』って言い返したら、『そんなワケねぇだろ、バーカ、バーカ』って、今までの何倍も言われて、やり込められちゃったのよ。完全に迫力負けね」それを聞いてトモローは、思わず笑ってしまった。確かに口ゲンカの時、封じられている言葉があるのは不利だろう。特に〝バカ〟なんて、軽いジャブのようなものではないか。「まぁ、幼稚園の平和なルールが、小学校じゃ通じなかったってことね。やっぱり、世の中は厳しいわ」確かに、それまでの育てられ方がまったく異なる子供たちが集まってくる小学校は、まさしく実社会そのままに違いない。「トモくんもミッちゃんも、そのうちわかると思うけど、親も立派な人ばかりじゃないし、考え方もバラバラだし……けっこう大変よ。たとえば、子供はとにかく元気が一番で、少しケンカするくらいの方がいいんだって考えている人もいるし、みんなと仲良くできることが何より大切だって考えている人もいるでしょ。そういう考え方の溝って、なかなか埋まらないのよ」何だか聞いているだけで、頭が痛くなってくる話だ。そういう考えの違いは大人の社会にも当然のようにあるが、ある程度まで歳をとると無用なぶつかり合いを避ける知恵がついて、自然と棲み分けが進むものだ。けれど幼い子供には、そんな器用さは期待できない。