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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 11/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

11り出ていい話ではないだろう。今の段階では、自分にできることはない。「その子供の親が近くにいたら、そんなことにはならなかったろうにね」「そうですね……友だちの話だと、その子のお母さんって、かなりヒステリックな人みたいですよ。自分が子供から目を離していたくせに、とにかく大きい声で小暮さんを責め立てて、救急車が来ても、ずっと怒鳴っていたらしいです」その親との話し合いもしなければならないだろうが、小暮さんの言い分は、あまり通らないのではないかと思う。こういう場合、大人の方が全面的に我慢するのが当たり前だからだ。「また何かわかったら、教えてよ」まるで自分の心に焦げ目がついてしまったような気分で、トモローは電話を切った。(結局、俺は何もしてあげられなかったな)そう思いながら台所に戻ると、チーコを抱いた美智子が後を追ってきた。「どうしたの、トモくん」トモローは夕食の支度をしながら、聞いたばかりの事の?末を話した。「その人には気の毒だけど……突き飛ばしたのは、良くなかったわね」そう、お尻をつねるくらいにしておけばよかったのに──きっと小暮さんは、自分がいじめられていた頃の記憶が、フラッシュバックしてしまったに違いない。この世界は本当に差別と不平等に満ちていて、そこで子供を育てるとなると、親にもさまざまな覚悟が要求される。それこそ、自分の宝である子供だけは、平和で静かな世界に置い