tomorou021

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/16

電子ブックを開く

このページは tomorou021 の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12ておきたいと思っても、風は遠慮なく吹いてきて、雨もまた降り落ちてくるのだ。「俺さ、頭に血が昇ったら、歌を歌って気持ちを落ち着けるのがいい……なんて、その人に言っちゃったんだよね。そんなの、ちっとも役に立たないよなぁ。バカじゃないの、俺」「そんな言い方、やめなよ。トモくんらしくない」いや、自分だって、いつだって明るく前向きってわけじゃないよ──トモローはそう思ったが、口には出さなかった。言ったところで、何にもならない言葉だ。「とりあえず、ご飯にしようか」わざわざ夕食をまずくすることもないと、できるだけ明るい声でトモローは言った。夕食の後、チーコを風呂に入れ、いつもどおりの時間に寝かしつけた。その間に、再びノリコから電話が入って、事件が起こった直後、小暮さんが泣いて謝罪していたことを知った。「トモローさん、俺、何か納得できないッスよ」途中で電話に出た武井が、興奮した口調で言った。「そんなトラブルをまき散らすような子供を放ったらかしにしていた親の責任は、どうなるんスか」「それは俺も思うけど……さすがに骨折させちゃあ、分が悪いよ」やはり、与えた損害が大き過ぎる。「そうかもしれないスけどね……何かムカつきますね」