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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13「そういう時は、歌を歌うといいよ」自虐的な気分で言うと、武井は何も言わなくなった。トモローもまた傷ついていることが、それとなく理解できたからだろう。「トモローさんが落ち込むことはないッスよ」「いや、別に落ち込んでないよ。冷たい言い方かもしれないけど、こうなっちゃった以上、どうしようもないし……それに、しょせん他人事だからさ」「そうッスよ。しょせんは他人事ッスから、あんまり気にしないでください」そんな言葉を交わして、電話を切った。「ミッちゃん、俺、ちょっとビデオ屋に行ってきてもいいかな」「今から?」時計にチラリと目をやって、美智子が尋ねてくる。ビデオ屋は、自転車で十五分ほどいったところにある。「明日、天気が崩れるっていうし……チーコに、ディズニーの新しいヤツ、見せてやりたくって」そう言うと美智子は笑って、「気をつけてね」とだけ答えた。服を着替えて外に出ると、風が冷たくなっていた。日に日に秋が深まっていくのが、その尖り方でわかる。トモローはチーコ用の補助席とビニール風防を取り付けた愛車に跨り、夜の町に走り出し