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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

そう言いながら武井は、自分の右肘ひじを指しながら言った。「そういうのって、確かに最近じゃ珍しいかもね」昔のマンガなどだと、貧乏を示す記号として当たり前に描かれていたような気がするが──記憶している限り、トモローの友だちには、実際にはいなかったと思う。そもそも学生服なんて、三年着たくらいで擦り切れたりはしないのではないだろうか。いや、夏の間は着ないのだから、実際に使うのは、それより少ないはずだ。「そいつの学ランは、お下がりだったんスよ。二人の兄貴が、たっぷり使ったヤツだったんです。俺はそれを、毎日のようにネタにしていましたねぇ……実はそいつの家はオヤジさんが病気で、オフクロさん一人が働いて全部を回してたんスよ。俺は、それを知らないわけじゃなかったのに……そいつの顔を見るたびに貧乏だのケチだの言って、笑い者にしてたんです」「うわぁ、人間のクズ発見」「ちょっとトモローさん、そんな言い方はないでしょう……俺だって、今は反省してるんスから」よく見ると、心なしか武井の目が潤んでいた。本当に、無思慮だった少年時代のことを悔いているのだろう。「きっとオフクロさんだって、余裕があれば、そいつに新品の学ランを買ってあげてたと思うんス。でも、いろいろ苦しくて、買ってやれなかった……そのために自分の子供がバカな