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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 9/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「それで小暮さんは頭に血が昇って、思わず突き飛ばしちゃったってわけか」やっぱり、そんな時に歌を歌って心を静められるはずがない。自分のアドバイスが、いかに的外れで無意味だったか、思い知らされた瞬間だ。「いや、そうじゃないんですよ。小暮さんも落ち着いて、ちゃんと男の子を注意したらしいです。でも五歳くらいの男の子って、素直じゃない子もいるじゃないですか。それで、その男の子がエミコちゃんに向かって、『デブッチョ、死ね』みたいなことを言ったらしいんです。それで小暮さん、我慢の限界を超えちゃったみたいで」おそらく、人の顔やスタイルのことばかり取り沙汰する現代の風潮が、小さい子供にまで、そんなことを言わせてしまうのだろうが──いったい親は、何をしていたのだろう。「それが、その子だけを置いて、買い物に行ってたみたいなんですよ」そのコーナーには、「保護者がそばにいるように」という注意書きがあるものの、そんなふうに親の都合で子供コーナーを使っている親は珍しくない。まだチーコは大丈夫だが、ある程度大きくなって、チョロチョロ走り回る子供を連れて買い物をするのは、かなり大変なのではないかと思う。「それで小暮さん、その子のことを突き飛ばしちゃったんですよ」「でも……子供コーナーって、クッションに囲まれてるよね?」子供コーナーそのものが、クッションで作った囲いの中にある。そこでは少しくらい転んでも、大きなケガはしないはずだが。