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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 10/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10格好をしていたのに、目の前にいるのは、暗色系のパンツスーツ姿だ。ピンと尖ったブラウスの襟が、何となく仕事の出来そうな雰囲気を醸し出している。「今日はチーコちゃんと一緒じゃないの?」「実は、お義母さんに攫さ らわれてしまって……メグちゃんはどうしたんですか?」「あの子は、保育園よ。もう少ししたら、お迎えに行かなくっちゃいけないの」メグちゃんは当時三歳くらいだったから、今はずいぶん大きくなっているだろう。「じゃあ、お勤めに出るようになったんですね」「私が結婚前にアパレル関係の会社に勤めていたっていうのは、話したわよね? その時の先輩が独立して会社を始めたから、そこに雇ってもらったのよ」「へぇ、いいですね」かつて知ったる業界で働くのは、まったく縁のなかった仕事に就くより、ずっとハードルが低いだろう。しかも気心の知れた人と一緒ならなおさらだ。「チーちゃんパパは、今も小説家を目指してるの?」メグちゃんママに聞かれた時、トモローは一瞬だけヒヤリとした。この人には、そんなところまで話していただろうか。(そういえば……話したっけ)初めて育児友だちができたのがうれしくて、かなり深いところまで自分の身の上を話したことを思い出す。あの頃は平気で二人でベンチに腰かけて、いろいろな話をしたものだ。