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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12トモローが心配そうに言うと、メグちゃんママは、いかにもウンザリした口調で答えた。「外で働くようになると、男の人と二人でコーヒー飲んだりするのなんて普通でしょ。仕事仲間にもお客さんにも、男の人はいるんだし」それは確かに、おっしゃるとおりですが。「そんなことを気にしていたなんて、昔の私もかわいいところがあったわね。いや、たぶん視野が今より狭かったんだわ。何せ家と近所の公園とスーパーだけで、世界が終わっていたから」メグちゃんママは、いかにも〝しょうがない〟と言いたげだったが、その口ぶりは、どこか専業主婦というものを嘲っているようにも聞こえた。確かに家を出て働くようになると世界は広がるのかもしれないが、だからといって、専業主婦たちを上から目線で見ていいことにはならないはずだが。何となく昔よりも距離感を覚えながら、トモローはメグちゃんママとコーヒースタンドに入った。「で、どうなの? 小説家にはなれそう?」それぞれ自分のブレンドコーヒーを買って席に着くと、メグちゃんママは真正面から切り込んできた。やれやれ、まるでどこかで見ていたみたいに、聞いてほしくないことをストレートに尋ねてくる。「いやぁ、頑張ってるんですけど、なかなか芽が出ませんよ。実は、少しばかり焦ってる部