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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 2/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

土曜日の午後、久しぶりに三人で外出し、その途中で本屋に立ち寄っていたのだ。むろん、選考結果が発表された文芸誌を立ち読みするのがメインの目的である。「いや、まぁ……残念ながら、うれしいお知らせはありません」文芸誌を棚に戻し、そのコーナーを離れてから、トモローは言った。「一次にも引っかかってなかったよ」「そう……やっぱり厳しい世界なのね」トモローの小声の報告を聞いて、美智子は神妙な顔で頷いた。「でも、あきらめなければ、いつか必ず入賞できるわよ」「そうだよね」美智子に肩を叩かれ、トモローも明るい声で返したが──心の底から出た言葉ではなかった。こんなにも落選が続いたら、さしものトモローも、少しくらい落ち込んでしまう。もともとトモローが主夫というスタンスについたのは、小説家になる夢に三年だけ集中するため……というのが、大前提だった。けれどその三年は、すでに半年ほど過ぎている。しかも気がつけば、トモローも三十歳になろうとしていた。その間、いろいろな雑誌の新人賞に、十回投稿している。その中で一次通過は二回、二次通過を一回経験しているが、残念ながら最終選考に残ることはできなかった。それを、いい成績と言っていいのかどうか──少なくとも三回に一度は通過しているのだから、まったく箸にも棒にもかからない……ということはないのだろうが、受賞して小説家