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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「そう……いつだったか、どこかの新人賞に応募する時、すごく慌てて書いてたじゃない? どうにか締め切りの日のお昼ごろに書き終わって、慌てて出力したり綴じたりしてたよね。それで近所の郵便局じゃ間に合わないから、夜遅くなってから大きい郵便局まで行ってたでしょ」新人賞の応募原稿のほとんどは、当日消印有効である。近所の郵便局は五時までで終わってしまうが、隣町にある大きな郵便局の夜間窓口に持ち込めば、まさに日付が変わるまで当日の消印を押してもらえるのだ。七時間もの差があるのは、やはり大きい。「そんなふうに慌てていたら、せっかく面白いストーリーを考えても、不十分な出来栄えになっちゃうことがあるんじゃない? 私の仕事でも、そういうことってあるし」「それは、わかってるんだけどさ」美智子に言われるまでもなく、その点にはトモローも気づいていた。世の中、どんなことでも慌てて得することは少ない。けれど、それでも締め切り直前までジタバタしてしまうのは、トモローの性格に寄るところが大きかった。少しでも面白くしようと、一度できた原稿に何度も手を入れてしまうのだ。実際、ワープロを使っているからこそできることで、もし手書きの原稿だったら、そんな時間ギリギリまで原稿をいじるのは、物理的に無理だ。結局、そうして何度も直しているうちに時間切れになって、慌てて発送せざるをえなくなっている。「だから次の作品は、もっと余裕を持って応募できるようにしたらいいんじゃないかな。そ