tomorou023

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 6/16

電子ブックを開く

このページは tomorou023 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

何の賞でもいい、とりあえず新人賞を一つもらえば、男が家で家事をしながら小説を書いていても、まったく問題ないはずだ。経済的な成功がついてくればいうことはないが、それは別に後でもいい。とにかく、小説を仕事にしている……と、胸を張って人に言えるようになりたい。そう思ってしまうのは、やはり覚悟を決めたつもりでも、トモロー自身に迷いや、体裁を気にする心が残っているからだろう。仕事を聞かれて〝主夫です〟と答えた時、目を丸くされるのには、いい加減ウンザリだ。そう思う気持ちが、どうしてもトモローを焦らせていた。〝急がば回れ〟という言葉よりも、〝下手な鉄砲、数打ちゃ当たる〟という言葉を信奉してしまうほどに。もちろん、それで結果を出せる小説家志望者もいるだろうが、トモローに関して言えば、それが悪循環を作り出していた。中途半端な弾た丸まばかり撃って、少しも的に当たらない。ときどき一次や二次を通過したりもするから、自分の狙いは正しいのだ……と、半ば強引に信じて無理ばかりする。その無理が奇妙な充足感に?がっていたりするから、本当にタチが悪い。「トモくん、まったく焦らないのもどうかと思うけど、焦り過ぎは禁物だよ。私もトモくんの小説を全部読んだわけじゃないけど、けっこう面白いと思う。だからこそ落ち着いて、〝これが自分の自信作だ〟って思えるようなものを書いたら」そう言ってくれた美智子の言葉は本当に正しいと思うし、結局は、そうするのが一番いい