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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 7/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

のだ……と頭では理解できたが、決意を固めるまでは至らなかった。少しでも早く結果を出したい、すぐにでも小説家として世に出たいという思いを、簡単に処理することができなかったのだ。もしかすると、主夫になって三年余りが過ぎ──トモローは、少しだけ疲れていたのかもしれない。そんなトモローの前に彼女が現れたのは、十一月半ばごろのことだ。その日は平日だったが、トモローは珍しく一人だった。お義母さんが自分の家でチーコを遊ばせたいと言って、連れて行ってしまったのだ。何でも友だちが来るとかで、自慢の孫を見せたいらしい。本当なら親の自分もついていって、お義母さんのフォローをするべきかもしれないが、そう申し出ると、やんわりと断られた。「大丈夫よ、心配しなくっても。短い時間だけど、たまにはトモローくんも羽根を伸ばしたら?」優しい口調で言われたので、ついトモローも好意に甘えることにしたが、もしかすると主夫をしている婿を、友だちに見せたくなかったのかも……と邪推してしまうのは、ある種の被害妄想だろうか。思いがけず時間が空いたので、トモローは小説を書こうと思った。