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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 9/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

スーツ姿の女性が、トモローを指さして大きな声をあげた。「あっ、チーちゃんパパ!」トモローは反射的に顔を向けたが、彼女が誰であるか、すぐに思い出せなかった。けれど、その笑顔には、確かに覚えがある。「もしかして……メグちゃんママですか?」「もしかしなくても、そうよぉ」その人は、まだチーコが赤ちゃんだった頃、使わなくなったベビー服をくれた〝メグちゃんママ〟だった。トモローが主夫になって、初めてできたママ友でもある。「久しぶりねぇ……元気にしてた?」「えぇ、もちろんです。メグちゃんママは?」「私も、相変わらずよ」おそらく、そう離れていないところに住んでいるはずなのに、メグちゃんママに会うのは久しぶりだった。おそらく一年半ぶりか、それ以上だ。そのくらいの時間が開いても、トモローが親しくしてくれた人の顔を簡単に忘れるはずがないのだが──すぐに気がつかなかったのは、メグちゃんママの外見が、ずいぶん変わっていたからだ。以前は化粧っ気もなく、今よりもポッチャリしていた。確か長い髪を後ろで束ねていたはずだが、今は首に届くか届かないくらいのショートカットで、体型もスマートになっている。何より以前はジーンズにトレーナーのような、いかにも動きやすさを重視した