tomorou025

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/16

電子ブックを開く

このページは tomorou025 の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12「それで、そのうちにオヤジと出会って一緒になったんだが……悪いことに爺ちゃんが亡くなった後に、後を継いだ兄さんが面倒な病気になっちまって、ホテルの方が大変なことになったらしいんだ。まぁ、娘としては、帰って実家を助けてやりたくもなるよなぁ」「それで、兄貴や俺を置いて帰っちゃったのかい?」「いや……初めは親父を説き伏せて、一緒にホテルで働こうとしたらしい。でも親父の方が、頑として首を縦に振らなかったんだと」もしかすると母親の実家と親父の間には、何らかの確執でもあったのかもしれない。親父は道路工事の下請け会社を細々と経営していたが、元々負けん気の強い性格だし、ついでに言えば激しく見栄っ張りでもあった。それこそ〝武士は食わねど高楊枝〟を地で行くタイプで、人に軽んじられたり、低く見られることを何よりも嫌ったものだ。当時の二人の間で、どんな会話がなされたのはわからないが──きっと親父は、入り婿のような形で母親の実家に行くことに、強い抵抗があったのではないだろうか。いかにも頭の古い親父が考えそうなことだ。「それで離婚するのなんのって話になって、出て行くなら、子供は二人ともおいていけって親父が言ったらしい。それで今に至る、と」「結局、親父たちが別れた理由って、それだったのか……わからないでもないけど、今の俺から見たら」「あぁ、くだらない。まったく、つまんない理由だよ。そのせいで俺たちが片親で育ったの