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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13かと思うと、親父にもオフクロにも、恨み言をぶつけてやりたくなるな」トモローの言葉に、ゴローが乗っかった。「やっぱり俺もおまえも、今は親になってるからな……どんな理由を出されても、納得はできんわな。オフクロには、俺たちより実家のホテルが大切だったのかと言ってやりたくなるし、親父には、少しくらい我慢できなかったのかって言ってやりてぇ」まったく兄貴の言うとおりだ──いい歳をして口に出すことではないが、どうして二人とも、あと少しの努力してくれなかったのか。「兄貴の話はわかったけど……どうして急に、オフクロにクリスマス・プレゼントをあげるって話になるんだい? そもそも、何をあげれば喜ぶのかも知らないのに」「会いに行くだけでいいんだよ」ゴローはアッサリと答えた。「俺たちが、それぞれの家族を連れて顔を見せに行けば、それがオフクロへの何よりのプレゼントなんだってよ……たぶん、最初で最後の」「最初で最後の?」それは、つまり──。「もう長くないみたいだな……肝臓ガンだってよ」その言葉を聞いた時、再びトモローは揺れを感じた。今まで存在を忘れていた母親だろうと、その辛い運命を知れば、やはりショックを感じるものだ。