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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 15/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

15「何でもありません……少し考え事をしていました」トモローは冷めたコーヒーをガブリと飲むと、気を取り直して言った。「メグちゃんママ、どうせなら『イッヒッヒ』を目指してくださいよ」「イッヒッヒ?」「そうです……これ、僕と奥さんの合言葉なんですよ。ちゃんと親になって、仕事でも成功して、楽しく暮らして、そんなふうに幸せ丸かじりしながら、『イッヒッヒ』と顔を見合わせて笑おうって、何かにつけて言い合ってるんです。人生のおいしいところを、総取りですよ」「やっぱり、仲がいいのねぇ」メグちゃんママは溜め息まじりに言ったが、感心してほしいのは、そこではない。「僕も偉そうなことは言えませんけど、どうせなら、そっちを目指した方がいいじゃありませんか? せっかく今まで、作ってきたんじゃないですか……それを壊すことを考えるなんて、バカらしいですよ。それに一度壊したら、二度と復活しませんよ」実際は復活する道もあるのではないかと思えるが、あえて今は言わない。「イッヒッヒ……ねぇ」まるで何かの呪文のように、メグちゃんママは何度も口の中で呟いた。(つづく)