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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

5その点、すでに両親のいない自分は気楽なものだ。父親は世を去り、母親は自分が小さい頃に、どこかに姿をくらませてしまった。二人きりの兄弟であるゴローとは意見がぶつかることもあるが、それは性格の違いとお互いがわかっているので、激しく拗こじれることは少なかった。(これで親父が生きてたりしたら、当たり前のようにプレゼント合戦に加わって、もっと面倒なことになっていたんだろうなぁ)まさにトモローがそう考えた時、隣の部屋で電話が鳴った。足早に電話に飛びつき、受話器を取る。「よう、元気かよ?」電話を掛けてきたのは、ゴローだった。まるで実家を思うテレパシーが届いたみたいなタイミングの良さだ。「もしかしてチーコ、寝てんのか? 悪かったな」トモローが声を潜めているので、ゴローはそれとなく察したらしいが──その口調が、どことなくゴローらしくなかった。いつもの抜けた感じがない。「別に謝らなくてもいいよ。兄貴が千里眼じゃないことは知ってるから」トモローは意識的に明るく答えたが、そのジョークに笑い返してくる声も沈みがちだ。「どうしたんだよ、兄貴……何かあったの?」「いや、別に何もないけど……俺、おまえに殴られるかもしれねぇな」