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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 9/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

9「でも、そんな旦那さんを変えられるのは、たぶん奥さんであるメグちゃんママだけじゃないですか? 他の人の言葉なんて、旦那さんは尚のこと、耳を貸さないでしょう?」「あの人は、自分でこうと決めたら、誰の言葉だって聞きゃしないわよ」吐き捨てるように言うメグちゃんママの表情を見るだけで、旦那さんとの仲がうまくいっていないのだとわかる。もしかすると話し合う気持ちそのものを、すでに失っているのかもしれない。「なるほど、会ったことはありませんけど、旦那さんは、そういう人なのかもしれませんね……でも、その旦那さんが、お客さんだとしたら、どうです? しかも、そのお客さんに服を買ってもらわないと、お店が潰れちゃうような瀬戸際だとしたら……メグちゃんママは、そんな簡単に諦めちゃうんですか? 絶対に買ってもらおうと、ギリギリまで努力するんじゃないですか?」服一枚が売れるか否かで、店の存続が決まる事態というのは、正直、想像できないが──言いたいことは、そういうことだ。「その努力を十分にしないうちに、メグちゃんのママをやめるとか口走るなんて、僕には信じられませんよ」テーブルこそ叩きはしないものの、強い口調でトモローは言った。「何だか、今日のチーちゃんパパ……いつもと、感じが違うわね。もしかして、そっちにも何かあった?」