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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 10/14

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10ろう。たかだか二十五年か三十年か先に生まれてきたくらいで、人を自由にどうこうできる権利なんて、あるはずがないのに。「でも、泣くなんて、兄貴らしくないなぁ。〝イナヅマ☆ゴロー〟の名が廃るよ」そう言ってトモローはゴローの肩を、痛いくらいの強さで叩いた。こんなセリフだって、自分らしくない……と思いながら。やがて年が明け──別の勝手な親からの電話が、トモローの家にかかってきた。言うまでもなく、メグちゃんママだ。「チィちゃんパパ? 家にまで電話して、ごめんなさいね」例のプレゼンの練習をしてから、その後のことを聞いていなかったので、ちょうど気になっていたところだった。特にオフクロのことを聞いてから、自分の夢とメグちゃんを秤にかけたことが前よりも腹立たしく感じられて、また一言くらい言ってやりたいと思っていた。「チィちゃんパパのおかげで、どうにか旦那の説得に成功したわ。自分でも、こんなふうになるなんて思わなかった……私、会社が作れるのよ」「そうなんですか」とりあえず、そのためにメグちゃんのママを廃業する必要がなくなったのは喜ばしいが、やはり今はメグちゃんの母親業に集中した方がいいのではないか……と、トモローは思うようになっていた。