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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12「それでね、妊娠の報告をした時、旦那が舞い上がっていたから、ここぞとばかりにプレゼンしたの……チィちゃんパパに教わったみたいに」「旦那さんが浮足立っている時にしろだなんて、教えてませんよ」 何かの拍子に、旦那さんが話を聞いてくれる気になるかもしれない……とは言ったが、まさか妊娠報告の機に乗じるとは。「そしたらね、さすがの旦那もわかってくれたのよ。私のやりたいようにしていいって。ただし、この子が十歳になるまでは、育児を優先するようにって」 その頃には、確かにメグちゃんも中学生になっている。「でも、それじゃあ、今回の出店の話には間に合わないんじゃないですか?」「それはそうだけど……考えてみれば、その方がいいのよ。プレゼンのために勉強してみたら、自分の見識がどんなに甘かったか、よくわかっちゃったから。だから十年間、会社経営のノウハウをバッチリ勉強するわ。育児しながら、通信教育で簿記も習うし」「それは、いい考えですね」心が晴れたのか、メグちゃんママの声は明るく、活力に満ちていた。話すだけで、こちらにも元気が伝わってくるような気がする。「チィちゃんパパには感謝してるわ。もし相談に乗ってくれなかったら、私はその時の勢いに任せて、もっと安直な方法を取っていたかもしれない……チィちゃんパパのおかげで、冷静になれたの。どうも、ありがとうね」