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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 2/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

2「それを聞いたら余計に、兄弟揃って家族付きで行くのは悪い気がするなぁ……俺が行くとしたら、正月シーズンが終わってからにするよ」「それもいいかもしれないけど、あんまりノンビリしないようにな」トモローの言葉に、ゴローは釘を刺した。母親に関しては、時間に余裕があると思わない方がいいだろう。「俺の分まで、よろしく言っておいてくれよ……帰ってきたら、話を聞かせて」「あぁ、どうせなら、俺んちで忘年会がてら、話を聞かせてやるよ」そんな会話を交わして電話を切ったのだが──暮れも押し詰まってきた十二月三十日、トモローはゴローと顔を合わせた。行く前に言っていたこととは違い、再び二人きりで、居酒屋で会ったのだ。(何か、あったかな)トモローはそう思ったが、誘いの電話を受けた時には聞かなかった。何だか、ロクでもない話を聞かされるような気がしたからだ。「どうだった?」居酒屋の席に落ち着いて、トモローは開口一番に尋ねた。「見た感じでは、オフクロは元気だったぜ……杉田のおばちゃんの話は、いつも大げさだな」そう語る時のゴローの顔には、何とも複雑な表情が浮かんでいた。本当は何よりも先に言いたいことがあるのに、無理に冷静になろうとしているようだ。