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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

4「この人が俺の母親かと思うと、何だか不思議な感じだなぁ」甥っ子たちと母親が一緒に撮った写真を眺めながら、トモローは呟いた。自分にとって母親は、いなくて当たり前の人──決して会うはずのない人だと思っていたのに、その母親が、自分もよく知っている甥っ子たちと一緒に写真に納まっていることに、少しばかり違和感を覚える。まして、それぞれの甥っ子たちの肩に腕を回して、いかにも「私の孫です」とでも言いたげな顔をしているなんて──。「あぁ、それで、この人が俺たちの弟か」兄貴と一緒に写っているスーツ姿の若い男性に目が行く。髪をピッチリと七三に分け、柔らかな笑みを浮かべていた。母親同様、少しばかりポッチャリとした体格をしているが、いかにも〝ちゃんとした社会人〟という雰囲気だ。「あぁ、彰あきらくんって言うんだ……去年、大学を出て、今年からホテルで働いているんだそうだ」この人が、自分の弟──トモローは、そう思おうとしたが、もちろん実感なんかできるはずがない。「そういえば、大学は東京だったってよ」「えっ、じゃあ、この間まで東京にいたの? 何だ、言ってくれれば、よかったのに」自分に弟がいるなんて話、どんなふうに教えられても信じなかったに違いないが、もし教えられていたら、新しい関係を作る時間が、それなりに作れただろうに。